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金融円滑化法に頼らない事業再生への道2012年4月17日

PHP研究所発行の月刊誌ヴォイス3月号に、当事務所の事業再生コンサルタント庄子興が取材協力いたしました。金融円滑化法延長発表の裏で、「金融機関主導による中小企業の選別」が行われています。経営に苦しむ経営者のみなさん、モラトリアム法にすがるのではなく、抜本的な対策が今こそ必要です。早めにコンサルタントにご相談ください。

「昨年来お願いしてきました静岡県A市の温泉旅館の新会社設立計画について、当初は2012年3月までに事業計画書の提出をお願いしていましたが、もう少し期限を延ばしていただいても結構です。いい計画書を書いてください」
春早々、新宿に事務所を構える事業再生コンサルタント庄子興(中央総合事務所)のもとに、A市の地元にあるB信用金庫の担当者から電話が入った。庄子は、不況とともにずるずると売上が減少してきたA市内の旅館組合からの依頼を受けて、これまで個々に営業してきた旅館群を一つにまとめる運営会社を作り、経営を効率化してこの窮地を脱しようという事業再生スキームを描いている。
同時にそれは、各旅館に対して不良債権を持つB信用金庫にとっても、健全取引先を確保するための良策となる。つまり、債務者債権者双方にとって「ウイン・ウイン」の関係をつくる画期的なスキームだった。とはいえこのスキームを完成するためには、当初の信用金庫側の言い分では「2012年3月末までに新会社の事業計画書をつくれ」というものだった。それ以降になると、各旅館が持つ債務返済の条件変更が難しくなるため、新会社への移行が難しいという見解だ。
そもそも、このように債務者が有利になるような通達を金融機関側から知らせてくることは珍しい。なぜ今回、B信用金庫は庄子に対してこんな連絡をしてきたのか。これが金融円滑化法再々延長の効果なのか」庄子は、そう納得する以外になかった。

昨年末、年の瀬も押し詰まった12月26日になって突然金融庁から発表された「金融円滑化法の2012年4月から1年間の再々延長」。それまで金融機関関係者や関係議員の口から出る言葉は「金融円滑化法の再々延長はない」という否定的なトーン一色だったために、金融関係者や中小企業経営者を驚かせるには十分だった。周知のように、金融円滑化法の正式名称は「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」。その名の通りこの法律の内容は、金融機関から融資を受けた債務の返済条件を変更して、一時的に利子支払いだけにするとか、金利を変えずに返済額を引き下げるといった、前代未聞の「平成の徳政令」だった。
2009年の9月、政権交代が起こり誕生した鳩山内閣のもとで金融担当大臣となったのは、国民新党の亀井静香だった。亀井の発案により、新政権の中小企業政策の目玉として11月30日に半ば強引にこの法律が可決成立したことは記憶に新しい。識者の間からは「世界の金融市場の常識としてありえない」「日本の金融システムの信用が失墜する」と言われながらも、その日から中小企業経営者にとっては、まさに福音となった。今回の延長策も、庄子から見ると「やめようにもやめられなかった」と映る。庄子はその背景をこう解説する。
「2011年9月末までのデータで、返済条件の変更を申し出た件数は全国で245万6000件余りです。この申請が認められたのは225万4000件余り。これは会社数ではなく、金融機関への申し込み数ですから、一社で2行に申し込んだとして全国で約120万社近くがこの法律の恩恵に預かったことになります。これは、全国の企業数の何割かわかりますか?」
国税庁が発表した平成22年度の法人税の申告件数は、全国で276万2000件。これは大企業も含めた法人数だから、中小企業に関していえば4割以上がこの法律を利用して返済条件の変更をしていることになる。言葉を変えれば、これだけの企業が経営状況が「青色吐息」なのだ。庄子が続ける。
「この状態を見たら、金融庁もいきなりこの法律を終了するわけにはいかなかったのでしょう。企業に対する延命措置というよりも、金融庁の市場判断に甘さがあったということになるのではないでしょうか」あるいは別の見方もある。
現在中小企業向けの融資は、そのほとんどが保証協会の保証付き債務だ。総債務残高は約37兆円に登る。そのうち、中小企業の約4割が円滑化法を利用している状況下で、不良債権化の恐れがある債務は約7割、21兆円にも登ると言われている。
バブル崩壊後の住専問題に際しても、約21兆円の不良債権が問題となったが、これにはまだ「土地・不動産」という担保があった。担保の不動産を売却することで、国の負担額は約7000億円で済んだ。
ところが円滑化法でリスケジュールしている債権には、売却できるような担保は保証されていない。ここで円滑化法を終了してしまったら、民主党政権はこの「隠れ債務」により、致命的な巨額債務を負うことになる。それが再々延長の理由とも言われている。ところが、この法律の再々延長の裏で、こんな通達が金融庁から出されていることもまた事実だ。「金融円滑化法に基づく金融監督に関する指針」。金融庁は、平成23年4月の段階で、副題に「コンサルティング機能の発揮にあたり、金融機関が果たすべき具体的な役割」と題された、こんな通達を全金融機関に出している。そこでは、「最適なソリューションの提案」として、以下のように語られている。
「金融機関は、債務者の経営課題を把握、分析し、事業の持続可能性等を適切かつ慎重に見極めた上で、その類型に応じて適時に最適なソリューションを提案する」
いい方はソフトだが、ここで語られる「類型」の最下層に入れられたら、それははっきり言って「金融機関による廃業勧告」となる。
「事業の持続可能性等の類型」は3つに分類せよと指針は言う。
その1、経営改善が必要な債務者(自助努力によって経営改善が見込まれる債務者)
その2、事業再生や業種転換が必要な債務者(抜本的な事業再生や業種転換により経営改善が見込まれる債務者)
その3、事業の持続可能性が見込まれない債務者(事業の存続がいたずらに長引くことで、却って経営者の生活再建や当該債務者の取引先の事業等に悪影響が見込まれる債務者)
指針によれば、金融機関は独自の判断によって、融資先の債務者をこの3つに分類できる。そしてそれぞれの類型債務者に対して金融機関が提案するべきソリューションは、
その1、ビジネスマッチングや技術開発支援、貸し付け条件の変更
その2、貸し付け条件の変更、各種事業再生スキームの活用
その3、債務整理等を前提とした債務者の再起に向けた助言、債務者が自主廃業を選択する場合の取引先対応を含めた円滑な処理への協力
つまり、金融機関から「その3」に分類されてしまった企業は、「債務整理=倒産、廃業」を宣告されたことと同じことになる。
金融庁は、表では「金融円滑化法再々延長」をうたいながら、その裏ではこの法律のポリシーとは真逆の「債務超過企業への死亡宣告」を、金融機関主導で進めようとしているわけだ。
まさに、全国の約4割以上の中小企業が生死を分ける分水嶺の上に存在していることになる。
はたしてこの窮地から、各企業はどう脱すればいいのだろうか。
以降は、こちらをご参照ください