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清水の視点ここに注目!

国家が国民の財産を奪いに来る日、その22012年11月 6日

『一本980円のジーンズの意味するもの?経済グローバリズムの真っ只中で』
長引く不況をどう克服するか」「日本経済の復活が最優先の政治課題だ」―――。
週末のテレビに政治家が出演すると、決まってこんな議論が始まります。
―――まずは景気を回復させてお金(血液)の循環をよくしないと、日本経済はこのまま瀕死の重体になる。誰もがそう主張しています。
けれどバブル経済が崩壊して以降約20年間、日銀がどんな対策を打とうが、政治家がどんな政策を立てようが、日本経済はどん底に沈んだままで浮上できていません。なぜ日本経済は20年間浮上できないのでしょうか?
それは、この停滞は「不況」なのではなく、「グローバル経済化への痛み」だからだと私は考えます。この経済状況を「不況」と捉え、国民にそう思わせようとしていること自体、政治家の一種のサポタージュ。経済はいずれよくなると期待を抱かせる発言をしている政治家は、国民を騙しているのです。国家による国民の財産の収奪の手先といっていいでしょう。いまの日本経済が陥っている「経済のグローバル化の真実」を、私は国民に広く正確に知らしめなければならないと思っています。
みなさんは、最近のおしゃれな女性たちが履いているジーンズが、一本いくらしているかご存じですか。私は最近、子どもが一人いる我が娘がこう語るのを聞いて驚きました。
「お父さん、私はこのごろ一本980円のジーンズを履いているわ。それでも結構おしゃれだし、ちょっとした外出に履いても大丈夫よ」
学生時代はあれほどブランド物好きで、アウトレットに出かけてはいろいろ買い漁っていた娘が、この変わりぶり。家計が苦しいからということではなく、一本980円のジーンズが、立派に娘のお眼鏡に叶う製品になっているという証です。
言うまでもなくこの商品は、日本で企画され第三世界で生産されている商品です。かつては中国が生産の主舞台でしたが、いまはベトナムとかミャンマーとかに生産基地は移っています。 だから「経済グローバル化なのだ」と私は言うつもりはありません。生産現場が国際的になっただけで、グローバル化なのではないのです。
むしろ言いたいのは「生産コスト+利益=価格」という、日本に古くから残るビジネスモデルが崩れて、「価格?生産コスト=利益」という、グローバルスタンダード(世界基準)のビジネスモデルに発想が転換したこと。言い換えれば、「最初に価格ありき」の発想をしないとビジネスが成立しなくなったことを、私は「経済のグローバル化」と呼んでいます。 つまり、「経済のグローバル化」とは、国境を超えた経済戦争のことであり、世界経済が「一物一価」へとまっしぐらに向かっているということです。 これまで衣料品は、先進国では高級品が売られ、発展途上国では粗悪な三流品が売られてきました。ジーンズは、日本のブランド物ならば一本5000円以上、欧米の高級ブランド品ならば、一本1万円を下らない値がついていたはずです。物価や人件費が日本の10分の1以下の東南アジアでは、980円程度が相場だったから、「一物二価三価」でした。
ところがこの商品が、日本で企画され、同じ原材料(糸)を使って日本の技術者の管理のもとで人件費が10分の1以下の発展途上国で生産されたら―――。一物二価三価は解消されて、一本980円という発展途上国並の価格が実現し一物一価になるのです。
つまり最初にグローバルスタンダードの価格(980円)ありきで、それが実現可能な生産場所(第三世界)が選ばれて、そこから消費地である日本までの物流システムが構築される。 そのサイクルこそが「経済のグローバル化」の真の姿なのです。だから日本でも、一本980円のジーンズが当たり前になりました。それは消費者には嬉しいことではありますが、実は「不況」よりも恐ろしいことでもあることを、私たちは知らなければなりません。
・生産現場は空洞化、デフレ圧力は止まらない
このことから、二つのことが言えます。
一つは、日本の生産現場の空洞化現象は今後も止まらないということ。
最初に価格ありきなのだから、人件費も地価も税金も社会インフラ経費も世界的に見れば最も高い水準にある日本は生産現場になりえません。各企業はこぞって第三世界を目指し、格安で良質な人材と生産基地を持つようになります。もちろんこれにはカントリーリスクも含まれるから、「尖閣諸島問題」で日系企業に暴動をしかけた中国などが選ばれるはずがありません。もっと安全で、人件費や地価が安い国へ―――、経営者は常にそのことを考えています。つまり、日本の製造業の現場では、今後も空洞化現象は止まらないということ。
もう一つ言えるのは、日本経済のデフレ圧力も減少しないということ。
全ての商品が世界で「一物一価」になるということは、世界一物価が高い日本からすると、「全ての商品は価格下落する」ことを意味しています。本来デフレとは生産が需要を上回って価格が下がることを言います。現在の日本では、需要はそこそこあっても海外で生産された商品の供給量がそれを上回っているから、商品の価格は下がります。100円均一ショップやアウトレットショップが隆盛なのはそのためです。
・不況よりも怖いグローバル化
この状況が続けばどうなるか。
生産現場の空洞化が続くということは、国内の雇用の減少を意味します。大学新卒の若者たちの正規社員での就職率が極端に低いのはこのためだし、失業率が高止まりしているのもこのためです。若年層を中心に収入は不安定になり、若者の車離れ、海外旅行客の減少、食費遊行費の減少等、可処分所得が減少し、社会に回る血液(お金)が少なくなっています。それだけではありません。国内の工場用地も不要になるので、土地余り状況が生まれてきます。
地方の工業団地にいくと、虫食いのように空き地が点在しているところが目立ちます。いや、空き地の中にわずかに操業している工場がポツンとのこっている工業団地も少なくありません。工場が海外に出て行けば、管理事務所等も不要になる。オフィスビルに空室が目立つのも、生産現場の空洞化が大きな要因の一つです。
工場で働く人がいなくなれば、彼らの消費を当て込んでいた商店や居酒屋、アパート等も閑古鳥が鳴くようになります。商店街はシャッター通りとなり、ゴーストタウンのようになってしまう。

こうなると、かつては「狭い国土で土地がない」と言われ、土地神話が生きていた日本でも、「土地余り」現象が起きてきます。現在地方都市に行くと、地価が下落するのではなく、土地の買い手がいないので「値段がつかない」状態です。常磐線と千代田線が乗り入れる取手あたりでも、駅前のオフィスビルは空室だらけで、土地が余ってしまっています。

ここで生まれるのが「資産デフレ」です。
これまで日本人は、社会に出て働き始めると「持ち家」を進められ、20年から35年の間住宅ローンを返済し続けてきました。サラリーマンは自宅を持つことが財産形成の第一歩と考えられていたのです。その流れが不動産価格をつり上げ、建設業を栄えさせ、金融機関の主な収入源となって金融業界を支えていました。
ところが資産デフレになると、マイホームを持っても価値が上がらない。購入時にローンを組んでも、数年後には実勢価格が下がってしまう。つまり高額なローンを組んで価格低下したマイホームを買うという矛盾が生じます。ならば自宅は所有する必要はないと考える人が増える。貸家でいいなら、住宅ローンは必要ない。新築物件も不要となります。
その結果、不動産業界、建築業界、金融業界も、これまでメインだった収入が消滅します。社会全体に血液(お金)が回らなくなる。
この状況をこれまでの経済常識に当てはめて考えてみると、「不景気」ということになります。これまでの不景気なら、景気は循環すると考えられていたから、時間がたてば景気は上向くこともありえました。
ところが現在の日本経済の状況は不景気なのではなく、見てきたようにその原因が「経済のグローバル化」にあるから、物価が世界レベルの一物一価に下がるまでこの状況は変わりません。つまり、日本が世界的に見て「豊かな」でありつづける限り、経済は低迷するという矛盾した状況になるのです。不況よりも「グローバル化の痛み」のほうがはるかに恐ろしい。そのことを、これでご理解いただけたと思います。もちろん、このグローバル化に苦しんでいるのは日本だけではありません。世界中の先進国が、一物一価に向かって進む経済に四苦八苦しています。世界的な「グローバル競争」が展開されているのです。
その中にあって、日本の政府は、無為無策の余り国民を苦しめ、世界競争の中でハンディを背負わせています。

その実態を、次回からお話ししていきましょう。